あんでっど、姫!Scene8

夜になって戻ってきた清嗣は呆然と座り込んでいた。予想通りというか、予想以上というか、事態は悪化しているようだ。香夜から話を聞いてそう思った。でも、沙耶は確かに言った「もうすぐお別れです」と−。
「…では、まだ何か心残りがある、ということになるのでしょうが…」
だけど、それがなんなのか、全く見当がつかない。もちろん、ついたからといって自分がどうこうできる問題ではないことはわかっているけれど。
今日出かけた先の浜で見つけた、綺麗な色の貝殻をちゃらちゃらと指で弾きながら、清嗣は深いため息をこぼした。

−次の日も、当たり前のように沙耶はここに存在していた。
「…う〜ん…何か問題でもあるの?私…」
自分でも不審にも思うけど、どうしてもその理由は思いつかないから、気にはしないようにしているのだけど、ここまでくるといささか気色が悪い。実は兄・治良の言葉は冗談で、自分は本当はちゃんと蘇生しているのかとも思ったのだけれど、どんなに手首や首筋に触れても鼓動は感じられない。
このままいることは構わない。そう思っている。でも、ここから肉体は消えて精神だけが留まってしまったら?それはとても辛い気がする。それが長時間たつことで変な力でも手にして、怪しまれた挙句、お祓いとかされるのかな…とかそんな事を考える。
「…ちょっ…ちょっとそれは笑えないかもぉ…」
こんな事ならもう少しちゃんと神仏の勉強しとけばよかったなぁなんて今さならながら後悔。
「あ、今からでも間に合うのか…」
そんなちょっぴりずれたことも考えたりして。

”文献を持ってきて欲しいんですが”
突然の申し出に侍女達びっくり。まさに青天の霹靂。天変地異の前触れか!?慌てて香夜の部屋へ駆け込んでいく。”姉様の事は私に”と言われていたからだ。
「−文献…ですか?具体的には、どのような…?」
そんな侍女達の姿を他所に落ち着いた顔で香夜は訊ねる。文献なんて簡単に言うけれど、細かく見ればその分野は様々で。
「ええっと…神仏に関して…と。あれ? −寺社仏閣だったっけ?」
慌ててきちんと覚えていないらしくお互いに確認をし合っている。それほど衝撃だったわけだ。でもまぁ、おおよその方向性はわかったので、それ以上、香夜はあえて追求はしない。
「わかりました。では私の方でご用意いたします。ご連絡、有難うございます」
にっこり微笑んでそう告げると香夜は自分の記憶からそのようなものがあったかを思い出していた。

清嗣も香夜からその話を聞かされて、内心は驚いたが香夜が落ち着き払っているので、あくまで落ち着いた声音で、”そうですか”と返した。
「それにしても、”神仏”ですか−」
余りに突拍子過ぎる。そのような文献を読んでいる沙耶なんて到底想像できるわけもなく、またなんで今頃こんな話を…と首をかしげる。最も、じっとしているのが何よりも苦手な沙耶が自らそのような事を言い出したのだから、それはそれでよい事ではないかとは思うけれど。状況が状況なだけに、疑問は残るもので。
「何か、思う節があったのでしょうね…沙耶殿に…」
あくまで自分に言い聞かせる。

「お姉様、お待たせしました。これくらいしかなかったのですが、良かったでしょうか?」
数冊の文献を持って、香夜は沙耶の部屋を訪れていた。”良かったでしょうか”なんて聞かれても、実際沙耶がそんな文献の細かい事を知っているわけではないので、答えがもらえるはずもないのであるが。
「あ、有難う。ごめんね、急に」
いつになく殊勝に沙耶が答える。本当に珍しいこともあるものだと妹という立場で有りながら思ってしまう。
「いいえ。大丈夫です。こちらに置かせていただいてよろしいですか?」
枕元の辺りに置いてそう伝える。沙耶は布団に入ったまま、うん、と答えただけで動こうという気配はない。
「お姉様?」
流石に不審に思う。大体が大人しくしていることが考えられない姉なのだ。それが人が来てもそのままなんて、どう考えてもおかしい。
「どうか、したのですか?」
「なんでもないわ。ちょっと、寝不足で…」
「…なら、良いのですけど…」
それじゃあ、お邪魔になるといけないので、と言い残して香夜はそのまま部屋を後にした。



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