あんでっど、姫!Scene7

一夜明けて、朝。夕べの不安はどこ吹く風、すっかり寝込んでしまっていた沙耶はあちこち行き来する女中達の声で目を覚ました。地下に保管しているものなんてあったっけ?全く検討がつかずにぼんやりとその動きを眺めた。
「う〜ん…。…ねぇ、どうかしたの?」
何の気なく聞いてみる。
「あ、姫様…」
そのうちの一人が気がついてこちらに顔を向ける。
「この辺になんか探し物でもあるの?昨日とかは誰も来なかったよ?」
「え、えぇ…そうなのですが…」
「あれ?探し物じゃ…ないの?」
どうもとんちんかんな話をしてしまったように思い、改めてたずねてみる。するとその女中は迷ったような、困ったような顔をしてこう答えた。
「いえ…なにか臭いがするという者がいて…みんながみんなというわけではないんですけど、何か動物が入ってきていたりとか、なにかが腐ってるようだったら大変じゃないですか。だからどこに何があるのか探してるんです」
「ふ〜ん…私もなんにもわからないなぁ…。じゃあ、地下の方は私が探すから、みんなは戻って。こんなにみんながお仕事止めてここにいたら大変でしょ?」
「え?ええ…まぁ…」
「さ、じゃあ戻って戻って♪あとは私が請け負いましょう☆」
「…はぁ…」
不思議な顔をしている女中達をにこにこと沙耶は階上へと送り出した。
階上へ戻りながら彼女達は更に疑問を浮かべた表情で話し合う。
「…なんか、不思議よ、ねぇ…」
「うん…姫様…ぽい…よ、ねぇ」
「でも、普通ありえないわよ、人間の臭いじゃないもの…」
「そうよ、ね…」

昨日、清嗣と決めたとおり、手毬をもって香夜は姉のいる地下への階段を下り始めていた。
「…?」
途中でふと、足を止める。何か、鼻につく臭い…余り、いいものではないが、なんなのか、自分にはさっぱり見当がつかない。女中達が「腐臭」と感じる臭いも、そのようなものに出会う機会のない彼女にはわからないのだ。
「お姉様…このような臭いのするところにいたら、ご気分が悪くなるのでは…。あっ!」
不意に思いついて、香夜は自室へまた戻っていった。それならそれでいいものがある、と。

「お姉様。今日は、”香遊び”なんてどうです…か…?」
にこやかに部屋に入り込んで香夜はその場に立ち尽くした。沙耶が居なくなっていた。昨日までいた場所から。
”今日か、明日には本当にお別れです”
夕べの清嗣の言葉が頭をよぎる。
「姉様っ!?」
持ってきた道具を床に置くと慌てて踵を返す−とその瞬間。
「わっっ!!!」
待ち構えていたように背後から大声を出されて沙耶は思わず尻餅をつきそうになった。
「…ね…姉様…お、驚かさないで下さいよぉ…」
心なしか涙声になりながら香夜は体制を立て直す。そして、同時に違和感を感じる。何か…。
「何をなさっていたのですか?姉様…」
「ん?あぁ。あのね、なんかよくわからないんだけど、地下が変なにおいするっていうからさ。私がその元を探してるの♪」
「ね…姉様…?」
「わかる?香夜は」
「…え?い、いえ。別段取り立てては…」
内心でぞくっとしながら、でも彼女にはばれぬよう、否定する。気づいていない…否、わからないのだ、純粋に。
「それより、姉様。あまり動き回られるとまたお父様達が心配されますから、ゆっくりお座りになってくださいよ。今日は清嗣様はお出かけされるということでしたから、私と二人になりますけど…」
そう言って、香夜は沙耶に部屋へ落ち着くように勧めた。
「あ〜…思い切り遊びたいよう…」
ぶつぶつ言いながら、それでも沙耶は元の位置へ腰を下ろす。心底退屈そうで、ちょっぴり気の毒だ。
「仕方ないですわ、姉様。−わがまま、言わないでください」
まったく、どちらが姉なのかわからない。香代には記憶がないが、兄の治良もそうとうやんちゃだったというから、むしろ自分が兄弟の仲で似ていないということだろう。自分がこの姉と同じ正確になることはまったく想像がつかないけれど。
「あれ?これは?」
「え?あ、あぁ、今日は香遊びをしようと思いまして、持ってきたんですが…」
「え〜…?そんなのやりたくないよ〜」
「そう言われましても、こう臭いがこもっていては……」
言いながらふと言葉を止める。そうだ。彼女は既に香りに対する感覚がないのだ。

結局、何するとも無く、子供の頃の話なんかしたりして、一日は終わった。部屋へ戻る香夜と、残る沙耶。二人は揃って”どうしよう”と思っていた。
”もう思い残すことは無い”はずなのに、いつまでもここから離れられない沙耶。
”体の方が限界に近づいている”事を察してしまった香夜。
どちらも結局それに対しての明確な手段を見つけることも出来ず、ただ清嗣の帰りを待つしかなかった。



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