あんでっど、姫!Scene5

「…」

沙耶の話を聞いて、にわかには信じられない、という顔をしていた。だけど、”信じる”と言ってしまった手前、それは言葉には出さない。一瞬にして、清嗣の思考回路はピークに達していた。
「…素直に信じられないとおっしゃっていただいて、かまいませんよ??」
沙耶にとってはそれは予想範囲内の事で、むしろ合点をされてしまってはびっくりしてしまうわけで。苦笑しながらそう告げる。
「え…。いえ…」
戸惑いながらもそう言おうとはしない。
「…沙耶殿が、現にそういう状況でいらっしゃる、ということ、です、よ…ね…」
語尾がだんだん細切れになっていくが、あくまで念押しで、という言い方をするのは流石、というべきか。聞いている沙耶もちょっと感心した。
「そうなんです。ですから、私は、自分の望みが果たされるまで、精神(こころ)はこの屍(からだ)にあります。陽の光を浴びてはいけないのでここから動けないのです。もうそれを思うと退屈で」
あくまで明るく、彼に負担をかけぬように説明する。言えば言うほど、おかしな話だ。
「…本当に…誰にも、お話にはならないのですか?この事…」
「だあって、誰も信じてくれないでしょ?本当なら、清嗣様にだって話すつもりはなかったのですから」
「…それは、そうかもしれませんが…では、まだ沙耶殿の望みは終わっていないのですね?」
「ええ。…でも、殆ど叶ったようなものですから。今日か明日か、今度は本当にお別れです」
「…そう…ですか…」
話しているうちに落ち着いてきたのか、段々普通のトーンに戻っていく。だが、逆に落胆の色も垣間見えたようなそんな気がした。
「ですから、ですね?清嗣様。私のことは気遣って頂かなくても大丈夫ですから♪」
「そうは…言われましても」
両腕を組んでう〜んと考え込んでいる。何を考えているかは沙耶には全く想像できない。
「…じゃあ、今日はかるたでも、しますか」
「え?」
突然の発想についていけず、沙耶は素っ頓狂な声を上げた。わからない…まったく、発想がわからない。
「だから、香夜殿もこちらへお呼びして、遊びましょう。まずは、かるたでも」
「いや、でも、かるたなんて私に…」
苦手、と言おうとして、遮られる。
「私も久しぶりにこの城に滞在をさせてもらっているのです。折角ですから、みなで遊びましょう。子供の頃のように」
「え?あ…でも…」
いきなりの事に流石の沙耶も面食らっている。特別なことをして欲しいとは思っていないのに。
「ここで待っていてくださいね。香夜殿を呼んで、かるたを取って参ります故」
…今まで沙耶は清嗣にこんな強引なところがあるとは知らなかった。ただびっくりしているだけの沙耶に”くれぐれも逃げたりしないで下さいよ”と念を押し、清嗣は階上(うえ)へと上っていった。

「香夜殿」
今まさに、地下へ降りようとしていた香夜に下から上ってきた清嗣が声を掛ける。
「清嗣様…」
「すまない。先ほどは香夜殿に偽りをいいました」
「…え…」
「あれ…?」
「先ほど、父上と話をしてきましたよ?急ぎの用ではなかったようですが」
「…あれ…」
嘘から出た真。沙耶と二人になるために口からでまかせを言ったつもりだったのに。清嗣は自分の幸運さに感動した。
「清嗣様???」
「あ、いえ。それだったらよいのです。それはそうと、香夜殿」
「はい?」
「沙耶殿と一緒にかるたでもやりませんか?香夜殿がいない間にそのような話になりましたので」
「え?姉様が…かるた?…なんだか信じられませんけれど…」
流石は妹君。よくわかっていらっしゃる。などと変に感心してしまう。
「きっと何か思うところがあるのではないかと思います。それで、香夜殿を呼びに来たところなのですよ」
「そう…なのですか…」
「…お嫌…でしたでしょうか?」
今ひとつ乗り気でない香夜を見て、何かいけない事を言ったのか、清嗣は不安になっていた。
「…いえ…」
一呼吸おいて、それから気を取り直したようにいつものように微笑む。
「わかりました。では、私、取ってきます。清嗣様は姉様のところへ戻っていてくださいませ」
「え…あ、はい」
すっ…と向きを変えて引き返していく香夜の後姿が見えなくなるまで、清嗣はその場で立ち尽くしていた。

「あ〜〜〜〜っ!それっ!私も気づいてたのにっ…!」
…結局始めてしまえばなんのその。苦手という言葉に偽りは無かったけれど、沙耶は楽しげにかるた取りを楽しんでいる様子。香夜は、ふと、清嗣を見る眼が意味ありげに見えるが、それでも楽しんでいるようには、見受けられる。
「本当に、姉様はこういう事が苦手ですよね」
沙耶とは逆に香夜はこういった室内での遊戯などが得意だ。見ほれるほど手際がいい。にこにこと笑みを浮かべながら取った札をつぎつぎ並べてゆく。そんな光景を札を読みながら清嗣はただ見ていた。仲のよい姉妹だと思う。その二人の…昨日まで許婚だった沙耶と昨日から許婚となった香夜。−二人の、特に香夜の心境がわからないわけではないが、むしろ自分の方が目一杯で…。
「ん〜〜〜っ!!!…清嗣さまっ!早く次を…!」
いよいよ躍起になって沙耶がわめいている。
本当に、彼女は消えてしまうのだろうか…。今夜か、明日にでも…。余りにもいつも通りの姿を見ていると、とても信じられない。
「清嗣様…?」
「えっ??あ…すまない…。ぼうっとしていました…」
「…余り気が進まないのですか?」
「いえ…そんなことはないですよ。本当にぼうっとしていただけです。…どうしてご姉妹でこうも違うのかと…」
「…どういう意味ですか?それっ!?」
深刻に取られすぎないよう、冗談めかして言ったら、案の定、沙耶がその言葉を受けて返してくる。香夜もくすりと小さく笑っていた。…よかった。…昔から、沙耶が誤魔化すことを得意としていた気がするが、自分もたいしたものだと、心の中で自画自賛する。
「では…改めて…。次をいきますよ」



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