あんでっど、姫!Scene4

朝日が差し込んで夜が明けたことを告げる。
「ん〜…」
寝ぼけ眼で周りを見回す。いつも通りの朝。…朝…。
「朝!?」
慌てて体を起こす。明らかに外は明るくなって来ている。
「やっば!日の光に当たっちゃ駄目だったんじゃなかったっけっ!?」
大急ぎで部屋を出る。寝れば忘れるとはよくいったものだ。すっかり忘れていた。確か兄の言葉にあったはず、日の光を浴びてはならぬ、と。
ばたばたばたばた、と騒がしく音を立てて、地下室へ飛び込む。昨夜の今朝だから、まだ自分の寝ていた部屋はそのままになっている。
「う〜…やばかったかなぁ。まずかったかなぁ。今の…」
どきどきしながら自分の体を見回す。今のところは、なんということもなさそうだ。
「だ、大丈夫…ぽいな」
はぁ〜っと深くため息をつく。そして考える。日の光に当たることが出来ないということは、この地下室から出ることが出来ないということ…。
「しまったなぁ〜〜。そこまで昨日は考えなかったもんなぁ。え〜…つまんないじゃん〜そんなの〜」
じたばったとしても仕方ないがもともとやんちゃでおとなしくしていないのが特徴の沙耶にはここに留まれというのは限りなく不可能なことだと思う。
「でも、まぁ、どうせ食べたりできないしな…。無理に表に出る必要はないけどさ」

……

……

……

「あ〜〜っ!!やっぱだめ〜〜!落ち着かないよ〜〜〜!」
結局数分で音を上げてじたばたと暴れ始める。
「−姉様?」
朝から姉に会おうと部屋を訪れたらすでに空になっていた為、あちこち探し回っていた妹・香夜が叫びに気づいて階段を降りてきていた。
「あ、香夜〜〜!」
救いとばかりに抱きつこうとして、はた、と思いとどまる。両手を広げてなんだか妙な格好だ。香夜の方も、てっきり抱きつかれると思っていたから思い切り身構えていて、それもなんだか変な格好で。そのまま目線を合わせた微妙な空気が流れた。先に声を出したのは、覚悟を決めていた香夜の方。
「ど、どうしたんですか?姉様…。いつもならこのまま抱き倒されるのに…」
「え?あ、ああ〜〜、いや、ねぇ。やっぱりね?心改めないと…と思って」
無理に言い訳をつける。やりたくても出来ないジレンマが彼女の心の中にくすぶっていた。
「で?どうしたの?まだ朝は早いのに…」
「どうしたの?じゃありません!昨夜の事です!どうして、あんな事…」
「あんな事…?あ〜〜………香夜は、困っているの?」
わかっていてわざと質問してみせる。困っているわけはないことは、既に昨日のうちに沙耶は知っていたけれど。
案の定、香夜は恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。…こういう所は遺伝なのかもしれない。兄の治良も誤魔化すのが下手だった。
「…ですがっ…ですが、姉様っ!姉様はあんなに楽しみにしていらっしゃったではないですか!?」
必死の顔で見つめる様は、本当に可愛い。可愛くて…羨ましいくらいに。だけど…
「だからね〜?私は駄目なんだってば。昨日も言ったでしょ?私は一度死んだんだから。縁起悪いじゃない?やっぱりさ」
諦めなければいけないのだ。自分の意思に関わらず。
「姉様っ…」
「もう、そのあたりにしてはどうですか、香夜殿」
不意に外から声が聞こえて二人が驚いて振り向く。
「「清嗣様」」
「いくら地下とはいえ、そのような話を大きな声で語るものではありませんよ。どこでだれが聞いているかもわからないのですから」
「あ…そう、ですね。すいません、気が回らずに…」
「いえ、別に責めているわけではないですから…そのように気を沈められないで下さい、香夜殿」
「はい…」
「…それはそうと、清嗣様はどうしてここに?」
「え?あ、ああ。忘れていた。香夜殿。お父上がお探しでしたよ」
「あ、は、はいっ。…それでは、今は失礼いたします。姉様、また、後ほど−」
「いいわよ、その話はもう−」
複雑な表情をして、香夜はしぶしぶ外へ出て行く。清嗣はそのまま沙耶の前に進み出ると、腰を下ろした。

……

……

「…き、清嗣様?なにか御用があったのではないのですか?」
「香夜殿を探していただけですから、用は済みました。ただ−」
「…ただ?」
「…私にも本当(まこと)のことは話していただけないのでしょうか」
「え…?」
自分は…自分だけは兄妹と違って誤魔化すことに自信があったのに…。ばれている、のだろうか…。
「…心配しなくとも、不自然に見えているのは、私と…香夜殿だけです」
まるで見透かしたように言葉を続けられて、沙耶は大きくうろたえた。そして必死に考える…。
…確か…
(そうよっ、確か兄様は死んでいることをばらしてはいけない、とは言ってないはずっ)
いっその事、ばらしてしまえば、話は早い。納得してもらえば、自分の心残りがなくなれば、改めてまたあの場所へ還ってしまうけれど。ぐずぐずしている暇もないのだから…。そう、それが一番手っ取り早い…!
「あ、あのね?清嗣様…。本当のお話、してもよいのですが…」
「ほ、本当に…ですか?」
「はい。でも〜ぉ…」
「…「でも」?でも、何があるというのです?」
「…信じてくれると、約束してくれます?」
「それは勿論…!沙耶殿が真実だと言われるのであれば。私はそれを信じます」
「それと…誰にも、言わないで下さいますか…?」
「沙耶殿が、そのように望まれるのであれば」
淀みなく、迷いなく返される言葉に嬉しさを感じた。…そんな清嗣だから、沙耶は好きだったのだ。
「あのね、清嗣様−」
一度入り口の周りを見回して鍵をかけたあと、沙耶はぽつりぽつりと語りだした。



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